ところざわ倶楽部

再録:2026年1月5日



東日本大震災リポート  通巻№27

    
 「戻れない現実」と「心の復興」
                                                      
                                   2016 6 -28     
記 松岡 幸雄


 超高層マンションの1階集会所で行われている週2回の「交流サロン」には、30
程が集まりいつも満席状態だそうです。お茶・コーヒーやお菓子は自由で、私にも
出し ていただきました。


原発近くの方は、 「原発が暴発しそう・暴発したという緊急放送をすべき町職員が、 我先に避難してしまって、我々にはそうした情報はなく取り残された。唯一知らせてく れたのは役場でも消防団でもなく、パトカーの警察官だった」と。いかに緊迫していた か、手に取るように伝わって来ますし、「あの日のことは生涯決して忘れな い」と、強く心の中に残っていました。


★戻れない・戻らない・・・
 体格のいい素敵な男性は、東電第1原発のすぐ北にある南相馬市から避難してい て、 今年の7月には避難指示が解除される予定との事ですが、「戻らない」とはっきり言い ました。
 「放射線量が下がって、郵便局やガソリンスタンドがオープンしてるけれども、近 く に大きな病院がないので」。他にも健康不安を理由に挙げる人がいました。また、除染 や廃炉でいろんな人が来てるので「治安が悪く不安だ」と。おまけに「ネズミで家は喰 い荒らされ、年齢的にローンなどでもう家の再建はできない」。
 私が「この先、どうされるのですか?」と聞くと、ここにいる約半数の自主避難者 は 来年の3月で退去、と決まっているが(福島県の調査ではその約7割が「あてがない」 )、強制避難者は「その後1年半くらいかな。その先どこに住むか考えているが不安だ 」「都内では家賃が高く、高給とれる仕事でなくてはムリだ」。
 私の隣の椅子に寄ってきて「小さい声で話をしたい」と。しかし人が増えてきたの で 、聞くことは出来なかった。どんな話をしたかったのか、今も気になっている。またあ る奥さんは、息子夫婦と小2の孫は東京に住むことに決めたので、「私一人で戻るしか ない」と話してくれた。そっとホンネを聞きたかったが、止めておこう・・・。
 この超高層のマンションを利用するには禁止事項が多くてびっくりしました。「ホ ンネ 」を胸の奥深くにしまい込んだままの生活のようでした。


,

      一心に「押し絵」づくり            皆さんに「ソフトな笑顔が」     


★一刻の「心の癒し・復興」に 最近、心から大声を出して笑ったことはないようで「笑顔を忘れていません か?」。私
はあちこちの被災地でマジックを披露してきましたが、ここの皆さんの表
情も始めは「 まじめ~」で、拍手や笑顔が「遠慮ぎみ」でしたが、だんだん大きな笑い声に変わりま した。別れ際に「また来てくださいね」と言われ、「勇気を出して来てよかったー」。
また訪ねる予定です。



★復興への道に動き出す・・・
放射能汚染で稲作ができないので先祖から引き継いだ田圃をつぶして、アパートを 建てる人、土地を「フレコン・バック」(除染した土などを入れた1トン入りの黒い 袋)の 置き場に貸して賃料を得る人など。一方で、福島県の高校生が、復興に役立ちたいと 農業で、水産業で、ロボット研究で、と取り組み始めた。また、楢葉町には廃炉に関し た「遠隔技術開発センター」が既にオープンし、16年に富岡町、17年に大熊町に廃 炉研究施設が計画されている。世界をリードできる廃炉技術の確立を期待したい。「除 染が進んでいないーー80%」(NHK調査)。しかし福島県を「再生エネルギーのメ ッカに」の強い期待がある。


プレートや活断層等で「災害列島」と言われる日本は、「原発依存社会」でいいの か ?「核のゴミ」の処分は?などの大きな問題に、今の我々が結論を出し、子や孫の世代 への先送りは許されないことです。
 福島県民と話していると「フクシマの現実を、もっと聞いてほしい」と訴えている よ うに強く感じました。